■9月1日は防災の日、9月1日を含む1週間が「防災週間」です■
内閣府の発表によると、今年は、令和4年8月30日(火)から9月5日(月)までが「防災週間」になっています。この期間に、国、関係公共機関、地方公共団体及びその他関係団体等の緊密な連携の下に、防災に関する各種の行事、「津波防災の日」の周知や広報活動等を全国的に実施することになっています。そのような中で、近年特に、ペットを家族化して捉えるようになり、飼い犬や猫を災害などから守る「ペット防災」の注目度も高まっています。環境省でも「人とペットの災害対策ガイドライン」を作成しています。ペット防災サポート士、ペット防災指導員などの資格を含めて、全国でペット防災に関わる講習会が開催されるようになりました。きっと皆さまの身近でもペット防災のイベントや広報が行われていることでしょう。
ペットを飼われている皆さま、防災の日に、ペット防災について考えて準備をしてみましょう。
人にとって安全な空間はペットにとっても安全な場所です。たとえば地震に対しては、家具の転倒防止などの対策を講じておくことも重要ですが、ペットのケージやハウスの場所も出口までの導線を考えて設置することも大切です。そして、「複数のペットがいる」「昼間はペットだけになる」「高層マンションに住んでいる」など、家族ごとの課題と対応策、必要用品などを考え、避難場所や 家族間の連絡方法など、いざというときに慌てないためにも、家族で話し合 っておきましょう。
■災害時の心得は?■
災害が起きたときに、まず優先すべきは飼い主さんが自分自身の安全を確保することです。その上でゆとりがあればペットはキャリーバッグなどに入れて一緒に避難します。ペットが見つからず危険が迫っているときは、同行避難を諦めて人だけ避難することも大切なことです。実際に、東日本大震災の時、猫を探しに家に戻って津波被害に遭われた飼い主さんがおられました。ですから、災害が発生したら、まずは飼い主ご自身の安全を確保してください。飼い主が無事でなければペットの安全を守ることはできないと肝に銘じて行動してください。
そして、ペット防災の基本は飼い主が責任をもって対応することです。それには、日頃からもしもの時に備えて必要用品を準備するだけではなく、ペットがどのような状況下でも飼い主の指示に従ってくれることや安心するケージ、キャリーバッグなどを普段から使用して慣れさせておくことが大切です。
■日頃の備え■
平常時から安全な場所にペットのための居所であるケージやハウスを設置して、ペットがこの中は安心、安全と認識して休める場所にしておきます。また、同行避難で困らないように、普段からいろいろな刺激や環境に慣れさせておくことや、普段とは違うフードや水、違う器でも食餌ができるようにしておくことも大切です。保育所、幼稚園や小学校に通う子どもたちは、被災したときに慣れない非常食で子どもがストレスを抱えないように、「防災の日」の給食に乾パンや災害用レトルトカレーなどを食べるそうです。ペットも非常時用に必要用品として準備したフードやおやつ、水などをこの機会に与えて、食べてくれるかを確認しておくのもよいでしょう。
場所のチェック
□ 家具やケージの固定、転倒防止策をしていますか
□ 屋外で飼われている場合は、飼養場所は安全ですか(外塀やガラス窓の近くを避ける)
□ ケージやハウスなどペットの避難場所(隠れ場所)を確保していますか
□ ケージなどの中に入ることを嫌がらないように、日頃から慣らしていますか
□ 飼い主の指示で自らケージやハウスに入りますか
健康でいるためのチェック
犬の場合
□ 狂犬病予防接種(義務)に加え各種ワクチンを接種していますか
□ 犬フィラリアやノミ・ダニなどの寄生虫を予防、駆除していますか
□ シャンプーやトリミングにより身体を清潔に保っていますか
□ 不妊去勢措置を行っていますか
猫の場合
□ 必要な各種ワクチンを接種していますか
□ 寄生虫を駆除していますか
□ 不妊去勢措置を行っていますか
もしもの時に迷子にならないためのチェック
□ 首輪と迷子札を着けていますか
(首輪に連絡先が分かる迷子札をつけておきます)
□ マイクロチップを挿入していますか
(挿入した際は必ず、(公社)日本獣医師会などに飼い主情報や動物情報を登録してください。迷子のペットが保護された時、マイクロチップが入っていれば、自治体・警察・動物病院でチップを読み取り、飼い主さんに連絡することができます)
□ 犬の場合は、鑑札、狂犬病予防注射済票を首輪に装着していますか
(飼い犬は狂犬病予防法により鑑札の装着、年一回の狂犬病予防注射をしたことの証明となる注射済票の装着が義務づけられています)
■防災マップで地域の避難場所を確認する■
国土交通省や各市町村で防災マップやハザードマップなどが作られています。自分が住んでいる地域でどんな災害が予測されるかを把握し、自宅から近い避難場所がどこにあるのかを確認しましょう。
家族で自宅からその避難場所まで、ペットを同伴して実際に歩いてみて、どんな経路で行くことができるかを確認しておくとさらに安心ですね。動物を連れていることで、避難が遅れないように同行避難訓練をぜひ行なってください。また、住んでいる地域の自治体の広報誌やホームページで、ペットを連れて行く場合の注意事項などを確認しておきましょう。
ペット同行避難については環境省が発行するペットの防災対策ガイドブックを参考にしてください。災害時には、犬にはリードをつけ、道にガラスなどの危険なものがないか確認しながら歩くこと。小型犬や猫はキャリーバッグに入れ、ドアが開かないようガムテープなどで固定すること、安心させるために毛布などでくるんで暗くすることなどを実践しましょう。
■同行避難=室内同居ではありません!■
災害発生時にペットを避難させる方法として「同行避難」と「同伴避難」があります。同行避難とは、災害発生時に飼い主が飼育しているペットを同行し、避難所まで安全に避難することです。避難所において人とペットが同一の空間で居住できることを意味するものではありません。それに対して、同伴避難とは、避難所において人とペットが同一の空間で居住できることを意味しますが、多くの市区町村では同伴避難は想定していません。
また、どのような状況下においても必ず同行して避難しなければいけないというものではありません。自宅が安全であり、定期的にペットの世話をするために戻れる状況にあるのであれば、避難所に連れて行かないということも選択肢の一つです。ただし、その場合も、毎日の食事と健康状態の確認が大切です。避難所の駐車場においての車中泊も同様です。特に、飼い主のエコノミー症候群、ペットの熱中症に注意してください。
げっ歯類等の一般的なペット以外の動物は、避難所での受入れが難しい場合もあります。状況によっては、同行避難が難しい事態も考えられるので、万一のときの預かり先や相談先を探しておくことも大切です。
豆知識
同行避難
災害の発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、指定緊急避難場所等まで避難すること。同行避難とは、ペットと共に移動を伴う避難行動をすることを指し、避難所等において飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではない。 なお、「避難所運営ガイドライン」(平成 28 年 4 月内閣府)では、「同 伴避難」という用語が用いられている。「同行避難」が、ペットとともに安全な場所まで避難する行為(避難行動)を示す言葉であるのに対して、「同伴避難」は、被災者が避難所でペットを飼養管理すること(状態)を指す。ただし、同伴避難についても、指定避難所などで飼い主がペッ トを同室で飼養管理することを意味するものではなく、ペットの飼養環境は避難所等によって異なることに留意が必要である。
出典:環境省:人とペットの災害対策ガイドライン
(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h3002/0-full.pdf)
■防災グッズ、必要用品を確認する■
携帯ラジオや非常食、救急品などといった必要用品を詰めた防災リュック(非常リュック)は、いざというときにそのまま手にして非難することができます。人用の必要用品とペット用の必要用品に分けて、リュックの中に入っているものが十分か、非常食が古くなっていないか、定期的に確認することも大切です。「防災の日」には、防災リュックの中身も確認するようにしましょう。
■災害時の必要用品の備蓄■
避難所では、人への準備はされていますが、ペットの備えは基本的に飼い主の責任になります。同行避難に備え、必要用品を備蓄しておきましょう。避難用品に優先順位を付け、優先度の高いものはすぐに持ち出せるようにしておきます。その他のものも、普段から目につきやすい場所、家屋が倒壊してもすぐに運び出せるような玄関や車庫などに保管しておきましょう。
■必要用品の優先順位はどう決める?■
優先順位1番目は命や健康に関わるもの(必ず持ち出すもの、防災リュックに先ずは入れておく)
・薬・療法食
・フードと水(できれば5日分以上)
*1人あたり飲料用・食事用で1日3リットル、ペットは1日に体重1kgあたり100mlが目安。
・予備の首輪・胴輪、リード
・食器
・その他(ガムテープ、養生テープ)*ケージの補強や段ボールの組み立てなどに使うことが多い
優先順位2番目はペットや動物病院の情報(防災リュックに入れておきたいもの)
・飼い主の連絡先
・かかりつけ動物病院の連絡先
・ペットの写真(はぐれてしまったときのために、迷子ポスター作成やSNSにあげたりするのに役立ちます)
・ワクチン接種状況や健康状態、既往歴の記録(預けなければならないときに必要な情報です)
優先順位3番目は普段のペット用品(一時帰宅が許されたときに持ち出したいもの)
・ペットシーツ、トイレ用品(猫砂など)、排泄物の処理道具
・タオルやブランケット
・手入用品(ブラシ、コームなど)
・遊び慣れたおもちゃ
■まとめ■
ペットを守るために必要なのは、飼い主が無事でいること。その上で、災害時はペットと一緒に避難する「同行避難」が基本。ただし、避難所内で一緒に過ごす「同伴避難」は認められていないケースが多いことを踏まえて、飼い主はまず避難先を複数考えておくこと。避難所や在宅避難、車中泊以外の選択肢として、一時的に預かってもらえる知人宅や施設、安全な屋外避難場所を探しておくこと。そのためにも、ケージなどに入ることや、預け先に慣れさせておくことが必要になります。
災害時用の必要用品の備蓄や、緊急避難時に持ち出せる量はわずかですから優先順を付けて防災リュック等に入れておくこと。
今年の防災の日には、以上のことを参考に「人とペットの同行避難」について見直してみてくださいね。
豆知識
「防災の日」は毎年9月1日に定められたのか
日本は地形や地質などから、地震や台風、津波、豪雨などの災害が発生しやすい国で、これまでにもさまざまな自然災害に見舞われてきました。歴史上の大きな地震災害のひとつとして記憶されているのが、1923年9月1日に起きた関東大震災です。この震災を忘れず、災害に対する備えをするようにと、1960年、国は9月1日を「防災の日」として制定しました。また9月1日は、立春から数えて暦の上では二百十日に当たり、太陽暦では9月1日頃にあたり、台風が来襲する厄日とされています。(ただし、9月1日に来襲した台風は昭和24年のキティ台風のみで、統計的な裏付けではないようですね。しかし、統計的に台風来襲の特異日(昭和)がみられます。それは、9月16日(2回)と9月26日(3回)であり、大きな被害を発生させています)
確かにこの時期は台風が多く、災害が発生しやすいことも、防災の日に設定された理由のひとつといわれています。
9月1日以外の「防災の日」もあります。例えば、阪神・淡路大震災が起きた1995年1月17日を忘れないため、毎年1月17日は「防災とボランティアの日」に定められ、1月15日から1月21日までは「防災とボランティア週間」となっています。この「防災とボランティア週間」は、災害時におけるボランティア活動や住民の自主的な防災活動についての認識を深めるとともに、災害時への備えの充実強化させることを目的としています。また「防災用品点検の日」は、3月1日、6月1日、9月1日、12月1日の年4回あります。
さらに、2011年3月11日に発生した東日本大震災では多くの人が被災して命を失いました。毎年3月11日は命の大切さを考え、震災で学んだことを風化させることなく災害に備えることが目的として「いのちの日」とされています。そして、この東日本大震災は未曾有の被害をもたらした「津波」が発生しました。東日本大震災では、津波の恐ろしさや、津波が起こったときの適切な対処法などを知らないことが、あれほど多くの被害をもたらした理由のひとつだとされています。その教訓を活かして、2011年6月には「津波対策の推進に関する法律」が制定され、その同法律のなかで、11月5日が「津波防災の日」だと定められました。何故、この日に定めたかというと、この11月5日は、嘉永7年(1854年)に発生した「安政南海地震」により、大津波が紀伊半島を襲った日でした。その時に、和歌山県の広村(現 広川町)で、稲むらに火を放ち、暗闇の中で逃げ遅れた村人を高台に導き、多くの命を救った「稲むらの火」の逸話に由来していていると言われています。
その他にも地域ごとに過去の災害にちなんで独自に「防災の日」を設けているところもあります。
・5月26日 県民防災の日(秋田県)
・6月12日 みやぎ県防災の日
・10月28日 岐阜県地震防災の日 など
ご自身が住まわれる地域にでも防災の日が定められているか調べてみてください。(都道府県・市区町村のホームページに掲載されています)