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ペットの急な嘔吐もあせらず対応!吐いた時の6つのチェックポイント

■急に吐いちゃった!嘔吐と吐出の違いはなに?■




気持ち悪くなり吐きそう、もしくは実際に吐いてしまうことを吐き気・嘔吐(おうと)と言います。私たちは、急に吐き気や嘔吐の症状が出た時は「何か悪いものを食べた?」と多くの人が思うのではないでしょうか。

犬は私たち人間と比べると、四足動物なので胃が横向きになっていて胃液も濃く、よく嘔吐する動物です。ですから、犬は食べ過ぎや水の飲み過ぎ、空腹、拾い食い、車酔いなどの単純な原因で吐きます。

嘔吐することでスッキリして、その後元気に過ごすことの方が多いですが、慢性的に嘔吐を繰り返したり、元気がなかったりする場合には、命に関わる重大な病気が潜んでいるかもしれません。

また、猫も同じように嘔吐することが多い動物です。猫は毛づくろいするときに飲み込んだ毛玉を吐く習慣があります。それ以外でも嘔吐することが多く、ある調査によれば、愛猫の嘔吐で病院を受診するケースは多く、嘔吐が猫の保険金請求の第3位に挙がっているとのことです。


■吐き気や嘔吐時のチェックポイント■




ここでは、吐き気や嘔吐時の観察ポイントや、その原因について解説します。

吐き気や嘔吐は、体の中に入ってきた、または存在する異物や毒物を外に出そうとする一種の防御反応であり、咳、嚏(くしゃみ)などと同じように本人の意思では制御できないのが嘔吐です。

では、病気と結びつく嘔吐や緊急を要する嘔吐、様子を見る嘔吐の違いは何でしょう。
まず、嘔吐かどうかを判断するには、なぜ嘔吐したのかをよく考えて、その時の状況を観察して判断することです。

しかしながら、飼い主が、犬また猫が吐く行為を細かく観察することは、実際には難しいかもしれません。なぜなら、吐くという行為には、一般的によく聞く嘔吐のほかに、吐出(としゅつ)もあるからです。

嘔吐とは、その内容物が胃や十二指腸であるのに対して、吐出は、胃に到達する前に食べ物が逆流することにより吐き出されることを言います。吐いた行為が嘔吐なのか吐出なのか、ここがはっきり分かるだけでも、その原因を探る大きな手掛かりになります。

そうは言っても可愛いわんちゃんやねこちゃんが実際に嘔吐したら、きっと飼い主はとても心配で不安になるでしょう。しかし、そういう時こそ飼い主が冷静になって嘔吐をした前後の状況や環境を思い出しながらよく観察しておくことが、その後の対応や診療に役立ちます。

check.1 嘔吐があった場合に注意して見ておく項目


(1)嘔吐した回数
(2)飼い主が把握できる情報の整理(餌を変えた、飼育環境の変化など)
(3)水を飲んでは吐き、また飲んでは吐くか
(4)食後の嘔吐であれば、どのくらいの時間が経過して吐いたか
(5)急性で起こったのか、慢性的に起こっているのか
(6)吐いた物の写真を残しておく(内容物や形状、状態の把握)
(7)嘔吐以外にトイレの状態(下痢や血便等はないかなど)

動物病院を受診される際に、上記のことをメモして獣医師に伝えることで、診療や処置がスムーズに行われます。


check.2 嘔吐物の色で判断


・黄色い液体


胃が空っぽになると、胃酸が胃壁を刺激して吐き気がでることがあります。とくに、早朝などに、黄色い胆汁が混じった胃液を吐く犬が少なくありません。

空腹時によく吐く愛犬への対処法としては、食事を与える回数を増やしてみましょう。(1日に与える量は増やさずに)食事の回数を増やしても、空腹時に苦しそうに胃液を吐く場合は、胃腸の病気や異物誤飲の可能性もあるので動物病院を受診してください。

・茶色や黒色の嘔吐物


茶色や黒っぽい嘔吐物は、血液が混じっていることも考えられます。嘔吐物に血が混じっている場合は、胃や食道などからの出血の可能性があります。出血してから嘔吐までの時間が長ければ、嘔吐物は茶色や黒色になり、時間が短ければ赤い鮮血が見られるでしょう。

ただし、ドッグフードが茶色いので、ドッグフードの色なのか血液なのか、見分けがつきにくいかもしれません。嘔吐物に血が確認できる場合は、なるべく早期に動物病院を受診してください。もし、判断がしにくい場合は、嘔吐物を持参して獣医師に確認してもらいましょう。


check.3 嘔吐物の形状でも判断


食べたものがそのままの形で吐き戻されているか、ある程度消化された状態か、異物が混ざっていないかをよく見てください。食べたものは、通常、半日以内に胃からは腸へと流れていきます。

もし、食べ物があまり消化されていない状態で吐き戻されたようであれば、胃腸の動きが悪いか、消化のしづらいものを食べた可能性があります。嘔吐後に元気であれば、慌てずに様子をみてもよいでしょう。

できれば、脱水にならない半日以内の短時間、愛犬に絶水をさせます。嘔吐をすると、愛犬はおそらく水を飲みたくなりますが、飲水が刺激となり吐き気を催す可能性があるのでお水を自由に飲むことをしないようにします。

同じく、絶食もさせてください。吐き戻したものを食べる場合もありますので、すぐに片付けましょう。それでも嘔吐が複数続く場合は、すぐに動物病院を受診してください。

では次に実際に嘔吐が起こる様々な原因についてみていきましょう。

■病気だったらどうしよう…嘔吐が起こる様々な原因■




・食べ物


これだけとっても様々な問題が考えられます。

1.普段から食べているものしか食べていなかったのか?
2.飼い主が目を離している隙に何か食べた可能性はあるか?
3.普段のフードを食べている時に何か変わった行動はなかったか?など

四六時中、犬や猫を観察する事は困難ですが、実はペットが食事をする際には、その食べ方や食べるスピード、また食べた後のトイレなど一連の流れで普段の健康状態を把握することがとても重要なタイミングであることをよく覚えておいてください。

・中毒、アレルギー


これは急性であれば摂取してすぐに症状が出る場合も多いので、原因を特定していくのは比較的容易です。ただし、アレルギー反応が遅効性の場合、何が引き金となって症状が出たのかは、その嘔吐した内容物や生化学検査等が必要な場合があります。

・薬


これは人と同じです。薬剤の副作用により、胃や腸の状態が悪くなり、結果的に嘔吐が見られる場合があります。対処方は症状がひどい場合はただちに薬の服用を中止し、獣医師に相談するのが良いでしょう。

症状が一過性の場合は、経過を良く観察し、獣医師にその旨を報告しましょう。

・消化器官の異常


胃や小腸などに(病巣等が見られる)場合。この場合には原因を特定し、すぐに治療が必要なケースなのか、または経過観察やお薬で対応可能なのかを判断する必要が出てきます。

・消化器系以外の病気


腎不全や糖尿病、肝不全など代謝性疾患に伴うものが原因で嘔吐を引き起こす場合もあります。
それ以外にもウイルス性の伝染病や全身性疾患や腹腔内疾患など、嘔吐を引き起こす病気や原因はたくさんあります。
また嘔吐した結果、食道炎、誤嚥性肺炎などを引き起こし、脱水症状になる場合もあるので注意する必要があります。

犬や猫もストレスで吐く


私たちと同じように極度な緊張下にあると、犬や猫も精神的なストレスが原因で吐くことがあります。
環境の変化、運動や遊びが満たされていない、飼い主とのコミュニケーションが満たされてない、相性の合わない同居犬や同居猫との生活など、それぞれの個体の性格によって異なりますが、犬や猫たちが抱くストレスの原因は数限りなくあるでしょう。

ストレスにより自律神経が乱れると、胃腸に症状が出るため、なるべくストレスを与えない生活を心がけてあげましょう。


■急いで病院に行く。一旦様子を見る。飼い主が判断すべきポイント■



基本的には、飼われている環境下で食事が終わってから吐いたとしても、その後に特に外見的変化や症状が見られない(元気に動いている、食欲もあるなどの)場合には、様子を見たり、対処法を実践してみてください。

ただし、生後数ヶ月の子猫の場合は、成猫に比べると、餌をしっかり消化吸収できないことによる低血糖、嘔吐による電解質バランスの乱れ、脱水などが起こりやすく、命に関わることも多く、また、成猫よりもウイルスや寄生虫による胃腸炎に罹患する可能性も高いので、あまり様子を見ずに早めに動物病院を受診されたほうがよいでしょう。

成犬、成猫では、何度も嘔吐する、吐いた物の中に血液が混じる、下痢もしている、吐いた後にぐったりしているようならば、吐いたもの(または写真)を持参して、すぐに動物病院へ連絡の上、診察を受けてください。


■嘔吐を改善!頻繁に嘔吐しているわんちゃん、ねこちゃんへおすすめの漢方■



普段の食事で、習慣的に嘔吐しやすければ漢方の活用も選択肢の一つです。

ストレス、もしくは胃腸の機能低下で、水分代謝が低下すると、胃腸に水が残りやすくなり、消化不良となります。その結果、嘔吐しやすくなります。この時、軟便が起こりやすくなりこともあります。

水分代謝をあげる漢方としては、五苓散(ごれいさん)が有名です。

五苓散(ごれいさん)


(1)口渇
(2)尿減少
(3)嘔吐

嘔吐、下痢症などに用いる。頭痛、腎炎、帯状疱疹などに用いる。水毒を治す効果あり。

五苓散に含まれる生薬は以下のとおりです。

猪苓(ちょれい) :サルノコシカケ科、利水滲湿薬 — 利水消腫薬/平
茯苓(ぶくりょう) :サルノコシカケ科、利水滲湿薬 — 利水消腫薬/平
沢瀉(たくしゃ) :オモダカ科、利水滲湿薬 — 利水消腫薬/寒
桂枝(けいし) :クスノキ科、解表薬 — 発散風寒薬/温
白朮(びゃくじゅつ):キク科、補虚薬 — 補気薬/温


■生薬の解説
・白朮、茯苓は、消化管内、関節内、筋肉内、組織間の水など、過剰な水分を血中へ移動させて、利尿する。
・猪苓と沢瀉は腎臓に働きかけて、血中の過剰の水分を尿として排出する。
・桂枝は、腎血流量を良くして利尿を助ける。

また、六君子湯(りっくんしとう)という処方も有効です。
ストレスを軽減しながら、胃腸に残った水分を減らします。
食欲不振などの症状が見られる時には、特に有効です。

六君子湯(りっくんしとう)


(1)胃腸虚弱
(2)胃内に水毒
(3)疲労倦怠

胃腸が虚弱で、胃内に水毒がたまり、貧血や疲労倦怠の症状のある場合に用いる。

六君子湯に含まれる生薬は以下のとおりです。

人参(にんじん) :ウコギ科、補虚薬 — 補気薬/微温
白朮(びゃくじゅつ) :キク科、補虚薬 — 補気薬/温
大棗(たいそう) :クロウメモドキ科、補虚薬 — 補気薬/温

以下、「二陳湯」
半夏(はんげ) :サトイモ科、化痰薬/温(有毒)
茯苓(ぶくりょう) :サルノコシカケ科、利水滲湿薬 — 利水消腫薬/平
陳皮(ちんぴ) :ミカン科、理気薬/温
生姜(しょうきょう) :ショウガ科、解表薬— 発散風寒薬/微温
甘草(かんぞう) :マメ科、補虚薬 — 補気薬/平

「人参」+「白朮」+「大棗」+「甘草」=四君子湯

■生薬の解説
・人参と白朮には胃腸機能を改善し、元気をつけて補う作用がある。
・半夏には、中枢性の鎮咳作用や鎮静鎮嘔作用があり、加えて痰を溶解する作用もある。半夏が痰を溶解し、茯苓が溶解した水(痰)を血中へ移行させ、陳皮が痰の排出を促す。
・茯苓は水を巡らして胃内停水を改善し、陳皮は胃を温め消化を助ける。
・大棗は緊張を緩和し、補血、強壮、利尿作用がある。
・生姜は体の表面と体内を温める。さらに胃の働きを改善し、余分な水分を除く。健胃鎮嘔作用もある。
・甘草は胃腸機能を整え、緊張を取る。肺の潤いを補う。また薬物、食物の中毒を解毒し、諸薬を調和する。
・大棗、生姜、甘草の3味の組み合わせは、古来より多用されており、自律神経系の調整と自然治癒力の回復に役立っているとされている。

このように、様々な症状に応じて、ペットにも漢方を応用することが出来ます。
漢方の使用については、ぜひ専門家にご相談ください。