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獣医師・薬剤師解説!犬や猫の皮膚病 対処法と皮膚の役割について



犬や猫は私たち人間とは違い、基本的には服を着ていないので外見上の変化を見つけやすいはずですが、全身が体毛に覆われているため異変に気づくのが遅くなりがちで、目に見える症状が出た時には、皮膚や体内でかなり進行しているケースも多いようです。

犬や猫が痒がるしぐさで、皮膚病に気づくこともありますが、普段からスキンシップやグルーミングなどを行っていれば、以下のような皮膚の異常に気づくことができます。

・発疹
・フケ
・脱毛
・痂皮(かひ)
*痂皮とは、いわゆる瘡蓋(かさぶた)のこと

皮膚病を考える上で、飼い主にとって重要な事は、その皮膚の状態のまま様子を見てよいのか、またはすぐに病院に連れて行った方がよいのか、もちろん命に関わるかどうかが一番気がかりなことですね。


■皮膚病対策のために、まずは毛と皮膚について知りましょう■




今回は被毛、皮膚の役割と、皮膚病について解説します。

被毛や皮膚には、病原体や有害物質の侵入や水分などの損失を防ぐバリア機能、体温調節機能など、さまざまな役割があります。

私たちが「顔色が良いね」「肌がきれいだね」「髪がつやつやしているね」と褒めるように、被毛と皮膚の状態は、身体の仕組みがきちんと働いているかどうかの指標、すなわち「健康のバロメーター」になっているのです。
 
犬や猫の皮膚は体重の約15〜20%を占めると言われています。ターンオーバーという言葉を聞いたことがあると思いますが、皮膚は常に新しいものに生まれ変わり、その周期は犬と猫では約21日と言われています。

また被毛は季節的に生え変わること(換毛)を繰り返しています。この皮膚の角質や被毛は「ケラチン」と呼ばれるタンパク質から作られているので、犬や猫は多くの量のタンパク質を食事から摂る必要があります。

猫では食事から摂取したタンパク質の約25〜30%が皮膚や被毛のために使われる、という報告もあります。

皮膚を正常に保つための栄養素
・皮膚、被毛の原材料             :メチオニン シスチン
・表皮の成長(ターンオーバー)、皮脂の分泌調節  :ビタミンA
・炎症を抑える                :オメガ3系不飽和脂肪酸
・毛質                    :オメガ6系不飽和脂肪酸 ビオチン
・フケや皮膚の乾燥を軽減           :ビオチン
・毛色                    :チロシン 銅

皮膚は薄い一枚の皮のようにみえますが、表皮、真皮、皮下組織の3つの層からできています。

一番外側の表皮は、日光(紫外線)、ほこり、細菌、ウイルスといったさまざまな異物から体を直接保護しています。真皮には汗腺や血管などが走り、皮膚に弾力を与えています。

その内側で皮下組織が皮下脂肪で体を守り、エネルギーの貯蔵庫にもなっています。
こうして皮膚が体の外壁として日常的に外の刺激から体を守ってくれています。


■様々な皮膚トラブル、皮膚の病気■


以下に紹介する皮膚のトラブルは主に犬に起こりやすい症状ではありますが、猫にも起こりうるトラブルです。心配事があったときの参考にしてください。

かぶれ、じんましん
上に記したように、バリア機能があっても防ぎきれない外部からの刺激や、特定の原因が刺激となることなどで起こるのが湿疹・皮膚炎です。

具体的な症状名として「かぶれ」「じんましん」などがあります。

かぶれは、シャンプー剤や金属、衣類など、刺激を与える物質やアレルギー源となる物質との接触で起こります。身のまわりにあるさまざまなものが原因になり得ます。

じんましんは特定の食材や薬、感染症などが原因となります。


■アレルギー性の皮膚炎■




・犬のアレルギー性皮膚炎


一般的に知られているものにアトピー性皮膚炎があります。
これは簡単にいえば、そのペットにとってアレルゲンとなる物質を取り込むまたは接触した際に急性又は慢性的にあらわれる炎症を伴う皮膚炎の総称です。

犬のアトピー性皮膚炎は、過敏症反応Ⅰ型に属し、主な症状としては痒みを伴い、脱毛などが見られる場合も多いです。

過敏症反応のⅠ型にはアトピー性皮膚炎の他に良く知られているもので以下のようなものがあります。
・ノミアレルギー性皮膚炎
・アナフィラキシー
・蕁麻疹 など

以下は、アトピー性皮膚炎に罹りやすい犬種です。
・キャバリア
・シーズー
・フレンチブルドッグ など


・猫の過敏性皮膚炎



いわゆる猫でのアトピー性皮膚炎のことですが、まだ詳しく解明されていないため過敏性皮膚炎やアトピー様皮膚炎と呼ばれています。

原因は大きく以下の3つに別れています。
・ノミ
・食べ物
・環境

また、以下の5つの症状が見られます
・かゆみ
・舐め壊し
・脱毛
・潰瘍

・粟粒性皮膚炎(粟状のできもの)


この病気を発症した猫は、強い痒みで皮膚を掻きむしったり、舐め壊したりします。皮膚の症状に併発して、アトピーに関連した気管支炎や喘息が起こる場合もあります。

命に関わる病気ではありませんが、強い痒みが続くことは猫にとっては耐え難い苦痛です。この病気が疑われる場合は、獣医師とよく相談をして、積極的に治療や飼育環境の改善を行ってください。

■真菌(カビ)性の皮膚疾患■



・マラセチア


飼い主であれば一度は耳にしたこともあるのではないでしょうか?

一番代表的なものは、マラセチアと呼ばれる酵母菌です。この酵母菌は基本的に、犬や猫の耳に好んで常在している菌で、耳の外耳道と呼ばれる部分に寄生しています。

普段から常在する菌なのでそれ自体が異常な事ではないですが、何かの原因でそれらの菌が増殖した際に、初めて症状がでます。

痒みの度合いは、その増殖度合いに比例して、多くなれば痒みも強くなる傾向にあります。犬や猫が耳を痒そうに脚でかいている場合などは注意して見てあげてください。

耳の炎症も増殖の割合に応じて比例する事が多く、軽度の場合は出血が見られることは稀です。

またマラセチアを疑う上で重要なポイントには色があります。

通常の細菌感染症では黄色がかったものが普通ですが、マラセチア性の外耳炎の場合は、黒い(褐黒色)を帯びることが多いのも特徴です。

耳の臭いについては、意外に弱いことが多いのも特徴です。
病院にいった場合は、検査として先ずは耳の中のチェックとともに、先ほどの色や臭いの特徴などから判断した上で、病巣部分を綿棒などで取り出した後、顕微鏡でマラセチアがいるかを確認します。

ただし、外耳炎にもその他に多くの原因がありますので、その原因をひとつひとつ特徴と照らし合わせながら確認していきます。

マラセチア皮膚炎に罹りやすい犬種
・ダックスフント
・ラブラドールレトリバー
・バセットハウンド など

・皮膚糸状菌症


糸状菌の一種でアルテリナリア菌というものがあります。

常在菌としてありふれた菌であり、基本的には病原性の無い雑菌という分類でしたが、病原性を示すことが確認され、現在では真菌性の皮膚病として皮膚糸状菌症という病名がついています。

一番注意が必要な事は、この病気は人間にも感染する、ズーノーシス(人獣共通感染症)の一つです。

子どもや高齢の家族がいる方は特に注意が必要です。

この病気の犬や猫を飼育していて、ご自身の体に円形の脱毛や炎症が確認された場合は、人の皮膚科を受診しましょう。

この菌は、特に1歳以下の仔猫や仔犬での発症率が高く、最近では免疫力が低下しているシニア犬・シニア猫でも重症化する傾向にあります。

症状が出る部位は、顔まわり、耳、頭、手脚の先やしっぽなどで多く、特に円形状の脱毛や淡紅色の発疹などが見られる場合が多いです。

初期の段階では痒みなどは軽度であるが、慢性化した場合や重症化した場合は痒みも強く出る場合があります。

予防方法は、綺麗な環境と体を清潔に保つことが大切です。定期的なグルーミングは飼い主が普段気づきにくい皮膚のトラブルなどを発見する場にもなりますので、外に出ることが少なく屋内飼育であっても定期的に行うことをおすすめします。

診断には、ウッド灯検査という特殊な光を用いた検査や病巣部付近の毛を取り、顕微鏡で確認する方法などがあります。

皮膚糸状菌症になってしまった場合は、抗真菌薬(内服・外用)や薬浴などを併用した治療が一般的です。

皮膚糸状菌症に罹りやすい犬種
・ジャックラッセルテリア
・ヨークシャーテリア
・フォックステリア など

皮膚糸状菌症に罹りやすい猫種
・ペルシャ猫などの長毛種

■細菌性の皮膚疾患■



主に細菌性膿皮症と呼ばれるものを指します。

イメージとしては化膿つまり膿(うみ)を想像して頂ければ分かりやすいと思います。
症状には、赤いポツポツした湿疹や黒いかさぶた、そして痒みを伴います。

膿皮症には以下の3つの分類があり、病変の深さや分布の違いで分けられます。
・表面性膿皮症及び表在性膿皮症
・深在性膿皮症
・偽性膿皮症

膿皮症の原因には様々あり、基本的には皮膚のバリア機能の低下が引き金となって起こります。皮膚のバリア機能とは、被毛・表皮・表皮に存在する常在菌などが関与し、外からの細菌の侵入などを防いでいます。

よくあるのが犬同士や猫同士の喧嘩です。喧嘩により体の皮膚が傷つくと、その部分のバリア機能が低下します。そこから細菌等の増殖によって膿皮症を発症するケースも多いです。

また、それ以外でも、シニア犬・猫は免疫力も低下しているので若い子に比べてやはり発症リスクは上がります。年齢に関係なくても内分泌疾患や自己免疫疾患を患っている場合やステロイド系の薬剤の不適切な投与や長期乱用などでも皮膚のバリア機能が低下する要因になります。

手足の先を良く舐める犬や猫にも注意が必要です。グルーミングはとても大切な行為ですが、それが不十分であったり、逆に舐めすぎて皮膚のバリア機能までを落としてしまうこともあります。

膿皮症の予防には、これらのことを理解した上で、基本的には皮膚のバリア機能が正常に働く環境を守ってあげましょう。例えば免疫力の低下を防ぐのであれば普段の食生活は大切です。おやつの与えすぎで偏った食事になる事は免疫だけでなく、被毛などの栄養にも影響します。

またノミ・ダニの予防などはもちろんですが、季節に合わせて飼育環境の適切な温度・湿度管理も重要です。足先を良く舐めてしまう子は、何かストレスを抱えていたりする場合もあります。気になった行動がある場合は、早いうちにかかりつけの獣医師に相談をする事をおすすめします。

膿皮症は発症した後では、重篤になるケースもあるため、早期に対処して、普段から皮膚のケアと免疫力を保つ予防が最も大切です。


■ちょっと、ひといきコラム■


犬や猫は「あせも」にならない?




湿疹・かぶれ、あせもは、私たち人間の皮膚のかゆみを伴う皮膚病ですが、犬や猫にも「あせも」はあると思いますか?

「あせも」は、大量発汗に伴い一時的に汗を排出する汗管(かんかん)が詰まり、汗の正常な排出が妨げられることで起こる発疹です。医学用語では汗疹(かんしん)といいます。
汗をかきやすい場所に赤くポツポツとした湿疹ができ、強いかゆみを伴ったり、ちくちくした感じや熱感を覚えることもあります。

皮膚に分布する汗腺には、主に体温調節のために汗を出す「エクリン汗腺」と性フェロモンの役割を果たしているといわれる「アポクリン汗腺」の2種類があります。人間の場合は、エクリン腺は体中に分布しており、汗は暑い時や運動した時に全身から汗をかいて体温を調節できますが、犬や猫は足の裏の肉球などわずかな場所にしか存在しません。

ですから、犬や猫は「あせも」にはなりません。



■寄生虫性の皮膚疾患■



主にノミ・ダニや昆虫が原因となって発症する皮膚疾患を指します。
代表的なものは以下の通りです。

・疥癬(かいせん)


イヌセンコウヒゼンダニ科と呼ばれるダニが原因となる。このダニ皮膚の剥がれたカスなどを食べて成長する。卵を持った雌ダニは表皮角質層に巣穴を掘り、卵を産む。

約2日後には幼虫がふ化して皮膚を摂食します。

これらはもちろん犬と接触する人への伝播も起こる可能性もあり、その場合は腕や足、腹部にかさぶたや痒い発疹がみられるが、不思議なことに犬のヒゼンダニは人の皮膚では繁殖する事ができないため、犬の治療が終えると飼い主で起こっていたダニの症状もすぐに落ち着きます。

犬の場合は症状が進行すると激しい痒みから、体を振る行為や搔きむしる行為が多くなり、大量のフケやかさぶたなどが出る場合もあります。

・耳疥癬


ミミヒゼンダニの寄生が原因となる。このダニは、人に対する感染性はなく、生涯を耳の中で過ごし、繁殖も行う。普通のヒゼンダニと同様に耳の中のカスを食べて成長し、雌ダニは外耳道で産卵し、幼虫は2週間~3週間程度で成虫になる。

耳の炎症は通常、両側で見られ、初期の段階では淡紅色の耳垢などが発生する。その後は乾燥した粉末状の黒っぽい耳垢が発生する場合もあります。

痒みの度合いも様々ですが、痒みが強い場合は、耳の後ろ側に自分で掻いた際に生じるただれているかさぶたなどが見られる事も多いです。

・ツメダニ症


ツメダニ科の伝染性のダニの寄生が原因となる。このダニは大型のダニで、捕食性もありイエダニを捕食します。

人へも伝播し、発疹や痒みを伴うかさぶたが腕や足、腹部に見られるが、人では繁殖をすることができないため、ペットが完治すると飼い主のその症状も速やかに落ち着きます。

犬の場合の症状は、寄生された子の年齢によっても異なり、多くは若年型と呼ばれる若い犬に多く症状が発生します。逆に成犬で症状が出る事は珍しく、その場合は、無症状ですでに寄生されている事が多いです。

強い痒みやかさぶたなどが剥がれ落ちる場合や、部分的に被毛がなくなる場合もあります。

・ツツガムシ寄生症


ツツガムシの幼虫の寄生が原因となる。人を含めたほとんどの哺乳類に寄生し、一部の鳥類にも寄生する。

ツツガムシの寄生は、必ず夏~秋にかけて発生するが、気候条件などが合うと春に寄生することもありえます。症状は、かさぶたや淡紅色の発疹また皮膚のただれなどが発生します。  

ペットからの人への伝播はないが、人が直接寄生される場合があり、寄生をうけた人では、手足や胴体に激しい痛みや痒みを伴う発疹が出る場合があります。

・毛包虫症


犬毛包虫症はニキビダニなどの毛包虫が原因となる。ニキビダニにも色々な種類が存在し、それぞれ寄生する場所にも違いがみられます。

この発症には免疫不全が挙げられ、若い犬においては遺伝的な要因があるとされています。ニキビダニは、毛包や皮脂線の中で生活し、成ダニになるまでには遅くても1カ月程度かかるとされています。

犬から犬へ伝播する時期は、新生児の際、母犬から感染するケースが多い。症状が顔や前肢に多くあらわれるのは、母親から乳を与えられたりする間に感染していると考えられています。症状は、局所型と全身型に分かれ、皮膚に現れる変化も様々です。

局所型の場合は、体の5か所程度に脱毛が見られ、そのほとんどは2~3週間程度で自然に消えるケースも多いです。

全身型の場合は、同じように脱毛が見られる場合が多いが、局所型と異なる点は、皮脂の過剰な分泌を伴い、皮膚の出血や膿皮症などを発症する。慢性化すると激しい痒みやひどい臭いも発生する場合があります。

毛包虫症は、どんな犬種にも発症する可能性があります。

犬毛包虫症を発症しやすい犬種
・フレンチブルドッグ
・パグ
・ヨークシャーテリア
・シーズー など

・ノミ寄生


ノミが寄生した場合に、皮膚に炎症が起こる場合にはノミアレルギー性皮膚炎と単純にノミに咬まれたことによる炎症が考えられます。ノミの種類もたくさんありますが、ネコノミが犬・猫ともにメインのノミです。
 
ちなみに人に寄生するスナノミという種類のノミは犬や猫には寄生することは基本ありません。ノミの生活には適した温度と湿度があり、ネコノミは寄生できない場合、2か月程度で死んでしまいます。

アトピー体質の犬では、ノミアレルギーを起こしやすい傾向にあります。また発症の時期は夏~秋が一般的です。

良く症状が現れる部位としては、腰の後ろ側に多く、脱毛や痒みを伴う発疹、慢性化してしまったものでは化膿する場合や少し脂ぎったベトベトした病変も見られる場合があります。

寄生虫検査は、基本的には肉眼検査や拡大鏡または顕微鏡により寄生しているものの確認が行われます。
治療にはノミダニ等の駆除薬などが使われますが、寄生したものの種類や飼育環境などによっては、予後が良くない場合や完全に駆除することが難しい場合があるため、必ず予防薬で予防できるものに関しては、忘れずに行うようにしましょう。


■内分泌性の皮膚疾患■


その多くは、クッシング症候群(そのほとんどは下垂体依存性副腎皮質機能亢進症)と言われているもので、下垂体または副腎皮質の異常が原因となる。自然的に発症するケースと薬の投与などによって発症するケースに分かれます。
 
薬剤が原因となるものは、過剰の糖質コルチコイドを全身に投与した場合や外用した場合に引き起こります。

6歳~16歳の成犬で多く見られる内分泌疾患です。クッシング症候群は、それ自体が皮膚疾患に必ず繋がるわけではないが、糖尿病などの他の疾患を併発することにより、重篤になる場合があるので注意が必要です。

症状として、全身症状と皮膚症状があり、全身症状の場合、糖質コルチコイドが多くの臓器の代謝に影響しているため、その症状も多様です。その中でも良くみられる症状には色素沈着・多渇・多尿・多食・起き上がれないなどがあります。

数カ月~数年かけて症状が現れ始めるため、最初のうちは飼い主もその変化に気づかずに進行してから、来院するケースも多いです。

皮膚症状の場合の多くは脱毛や皮膚の乾燥などです。脱毛の場合は、頭や肢を除くと左右対称にあらわれることも特徴です。乾燥症状の場合は皮膚結石が見られる場合もあります。痒みはあまり起こらないケースも多いです。

クッシング症候群の検査には、症状や状態によって変わりますが、血液検査や生化学検査、X線検査などを行います。血液検査の際の指標になるのは好中球の増加、リンパ球の減少、好酸球の減少などが見られる場合が多いです。

クッシング症候群を発症しやすい犬種
・プードル
・ダックスフント
・ポメラニアン など

■自己免疫性の皮膚疾患■


・天疱瘡


比較的珍しい疾患ではありますが、自己の免疫異常によっておこる皮膚疾患として天疱瘡が有名で、これらはいくつかの種類に分かれています。


(1)落葉性天疱瘡



天疱瘡の中で最もよく見られるパターンになります。

主には成犬が発症するケースが多いです。症状は様々ありますが、最初の変化は平らで大きな膿疱が発生し、膿疱自体が壊れやすく、すぐにただれたりかさぶたになります。さらに特徴として眼や鼻の周りで左右対称に皮膚の角質が剥がれ落ちたり、全体的に白っぽくかさぶたが発生する事があります。

また肉球に痛みを伴う亀裂が見られる事もあります。全身症状は珍しく、ポイントは眼のまわり、鼻まわり、また肉球や爪といった特定の箇所に多く報告されています。


(2)紅斑性天疱瘡



落葉性天疱瘡の亜型とされており、特徴は顔面のみにその症状が発生するという点です。

その多くは鼻のまわりや耳のまわりで、膿疱の形成に始まり、ただれやかさぶたが生じたり、色素が落ちてしまうこともあります。さらに日光に対しても過敏性であるので、普段の飼育環境や病院に連れて行く際も特に注意が必要です。


(3)尋常性天疱瘡



主には成犬で発症しますが、稀に1歳未満での報告もあります。水疱の発生が特徴で、急速に潰瘍やかさぶたを形成していきます。口腔内や鼻や爪などに症状が出る場合が多いです。また鼠径部などに発生した例も報告されています。

これらの自己免疫性の皮膚疾患の予後は決してよいとは言えません。一般的には落葉性天疱瘡、紅斑性天疱瘡の方が尋常性天疱瘡よりも良い傾向にあります。それでも自己免疫性の疾患のため治療には免疫抑制剤を使う場合が多く、体への負担も大きいです。しかし稀に自然に回復する症例もあります。

このような自己免疫性の皮膚疾患は飼い主から見ても、明らかに異常だと気付くケースがほとんどであり、病気の進行も早いので速やかに病院へのご連絡をお願いします。場合によっては日光による過敏性も考慮し、最大限の配慮が必要になる場合があります。

・全身性エリテマトーデス


詳しい原因の全てはまだ解明されていない部分も多いですが、多くの要因が複合して関係している自己免疫疾患です。免疫系以外にも遺伝要因や環境要因なども含まれます。

主には成犬で発症し、雌よりも雄の発症割合が多いのも特徴です。また発症しやすい犬種はコリーやシェパードなどが多い傾向にあります。全身性の症状の多くは発熱などから始まり、関節炎やたんぱく尿を伴う場合もあります。


■いちばんの予防法は、早期発見早期治療■




皮膚症状は様々ですが、潰瘍や淡紅色の発疹、脱毛が見られ、特に鼻先や耳の中、鼠径部周辺などにも症状があらわれます。

病変部分は光に過敏性であることもあり、痒みの程度も様々です。予後も症状や病変部位により、様々ですが、早期に発見されれば、それだけ早く治療することができ、痒みなどの苦痛に対処することができます。


■皮膚病になってしまった皮膚の手入れ■




皮膚病の症状によっては犬の体臭が気になることもあります。患部から出る膿の臭いや、皮脂臭が原因であることが多いようです。この場合は獣医師の指示に従って、膿をこまめに拭き取り、患部を衛生的にすることである程度改善できるようになります。

シャンプーをした後は、皮膚や被毛をしっかり乾かすことも大切です。生乾きの状態では皮膚や被毛から菌が繁殖しやすくなります。こうして増える菌も臭いの原因にもなり、患部をより悪化させることになるため、体は必ず乾いたタオルで拭いてあげ、常に清潔を保つようにしてください。


■治療へ向けての 一番の近道とは■


このように私たち人間でも名前を聞いたことが多い病気ですが、その原因を探すことは容易ではありません。獣医師は先ず、皮膚の状態を目で確認し、そして場合によっては血液検査などを行った上で、アレルギーの原因となった物質を特定します。

検査方法は、近年とても進化しており、様々なアレルゲン物質に対して、反応するかどうかをチェックすることもできるようになっています。

アトピー性皮膚炎の治療には、アレルゲンの特定からその除去を行い、その後でステロイドや抗ヒスタミン剤の服用、他の皮膚疾患を合併している場合には、抗生剤や抗真菌薬などの選択になります。

飼い主にできることは、一緒に暮らすペットの生活環境をいつも考えてあげることです。

アレルゲンとなった可能性がどこにあるのか。それは散歩中に会った他の子との接触だったかもしれません。

もしかしたら新しく与え始めたおやつだったかもしれません。考えたらきりが無いことでも、かかりつけの獣医師には必ずお話ください。

それが治療への一番の近道です。



■脱毛や乾燥など、慢性的な症状には漢方もおすすめ!■





皮膚症状の場合の多くに見られる脱毛や皮膚の乾燥などは、漢方の得意分野でもあります。慢性的な皮膚の症状が見られる時は、漢方薬を活用するのも良いです。


■皮膚を健康な状態に保ちたい



皮膚の状態を健康に保つには、皮膚の表面に栄養をしっかり送ること。すなわち皮膚の表面の血流を改善することが重要です。皮膚の表面を促す桂皮が入った桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)が汎用される漢方です。

桂枝茯苓丸料(けいしぶくりょうがん)


桂枝茯苓丸料に含まれる生薬は以下のとおりです。

桂枝(けいし)  :クスノキ科、解表薬 — 発散風寒薬/温
茯苓(ぶくりょう):サルノコシカケ科、利水滲湿薬 — 利水消腫薬/平
牡丹皮(ぼたんぴ):ボタン科、清熱薬 — 清熱解毒薬/微寒
桃仁(とうにん) :バラ科、活血化瘀薬 —活血調経薬/平(小毒)
芍薬(しゃくやく):ボタン科、補虚薬 — 補血薬/微寒


・桂枝は、血行を良くして、瘀血の除去作用を助けます。

・茯苓は、消化管や、関節内の水、筋肉内の浮腫、組織間の水など、過剰な水分を血中に移行させて利尿します。

・桃仁と牡丹皮は、うっ血や瘀血を除き、静脈のうっ血による病変を伴う疾患を治します。牡丹皮には、さらに抗炎症作用があります。

・芍薬には、筋肉の異常緊張を和らげる作用があり、腹痛や筋肉痛を治します。


■免疫力をつけて、皮膚病をバリア!皮膚の改善にも役立つ漢方



何かしらの感染などが原因で皮膚病になりやすい場合は、黄耆(おうぎ)と呼ばれる生薬が入った処方を使います。黄耆は免疫を改善しますが、特に皮膚付近に働きます。

黄耆が入った処方の一つに黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)という処方があります。
人間の場合、アトピー性皮膚炎などでも使用する漢方薬です。

また、「熊笹、松葉、朝鮮人参」の3つの組み合わせも血流を改善し、皮膚の改善に役立ちます。実際、サラブレットの毛並みを改善するために使われていた組み合わせでもあります。

黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)


黄耆建中湯に含まれる生薬は以下のとおりです。

黄耆(おうぎ)   :マメ科、補虚薬 — 補気薬/微温
桂枝(けいし)   :クスノキ科、解表薬 — 発散風寒薬/温
芍薬(しゃくやく) :ボタン科、補虚薬 — 補血薬/微寒
大棗(たいそう)  :クロウメモドキ科、補虚薬 — 補気薬/温
生姜(しょうきょう):ショウガ科、解表薬— 発散風寒薬/微温
甘草(かんぞう)  :マメ科、補虚薬 — 補気薬/平

(別包)
飴糖(いとう)=膠飴(こうい):餅米、うるち、小麦、麦芽、補虚薬 — 補気薬/温

・黄耆は、皮膚に水毒がたまるような異常に使用しますが、同時に元気を補ったり、免疫力をつけたりする作用があります。
・桂枝は血行を良くし、体表部を整え、解熱、鎮痛、鎮痙、健胃作用の他に、抗菌作用、抗アレルギー作用が報告されています。
・芍薬と甘草には平滑筋、骨格筋の痙攣性疼痛を治す作用があるため、しばしば芍薬と甘草が組んで使われます。また腸管の蠕動が異常となり、腹が張った状態を治します。
・大棗は緊張を緩和し、補血、強壮、利尿作用があります。
・生姜は体の表面と体内を温める。さらに胃の働きを改善し、余分な水分を除く。健胃鎮嘔作用もあります。
・甘草は胃腸機能を整え、緊張を取ります。肺の潤いを補います。また薬物、食物の中毒を解毒し、諸薬を調和します。
・大棗、生姜、甘草の3味の組み合わせは、古来より多用されており、自律神経系の調整と自然治癒力の回復に役立っているとされています。
・飴糖には、体力を補う作用があります。

正しく漢方を選ぶためには、ペットの体質なども考慮する必要があります。
漢方を活用する場合は、ぜひ専門の方にご相談ください。