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ペットの介護情報全部のせ!飼い主の介護疲れを防ぐ為のアドバイス



日本では、他の国に類をみない速度で高齢化が進んでいるといわれています。

現在、同じことがペットにも起こり始めています。
ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」によれば、2020年の犬の平均寿命は14.48歳、猫の平均寿命は15.45歳となっています。
また、7歳以上のシニア層にあたる犬は全体の55.6%、つまり、国内の犬の半数以上はシニア層であるということになり、この5年間を見ると、少しずつではありますが、13歳以上の犬が増える傾向にあることがわかります。(ちなみに、シニア層にあたる猫は全体の44.1%)

そして、ペットの高齢化が進むに連れて新たな問題やサービスも現れてきました。本コラムでは、こうしたペットの高齢化の現状を踏まえて、シニアといわれる犬猫の特徴とお世話の仕方、それらに関連して現れた課題とサービスをご紹介していきたいと思います。


■「シニア期」といわれる基準はなに?■


私たち人間のライフステージでいうシニアは、国連では60歳以上、WHOでは65歳以上と定めています。犬猫のシニア期とは、人間のシニア期の年齢に換算してのおおよその年齢です。

犬猫はどのような年数で「シニア」と言われるような年齢になり、ペットオーナーはどのような変化に気づくことができるでしょうか。

私たち人間を含めて年齢というのは単なる数値であり、状態ではありません。犬猫も人間とまったく同じように、老化のプロセスは個々によってそれぞれですが、7歳を過ぎる頃から老化の兆候が示し始めます。

外的症状は見られなくとも、体内の細胞の再生は減速しており、心臓と免疫システムを含めた身体機能の活動はゆっくりと弱まっていきます。


猫の年齢区分


・7〜10歳:中高年期
・11~14歳:高齢期
・15歳以上:老齢期
人間の年齢に換算すると、10歳の猫は56歳の人間とほぼ同じです。猫が20歳まで生きることは珍しくなく、人間でたとえるならば96歳くらいになります。

*ギネス世界記録に記載されている猫は、米国テキサス州にいたクレームパフという猫で、38歳(1967~2005)まで生きました。38歳といえば、人間の年齢換算では約168歳になります。


犬の年齢区分


小型犬:期7歳以上、高齢犬

犬は、大きさが違えば、老化の状況や速度は変わります。小型犬は大型犬よりも平均余命が長いため、小型犬の老化は大型犬に比べてゆっくり進みます。逆に、大型犬は成長するまでに時間がかかり、老化は早くなります。
ですから、猫のように一般化された年齢区分はありませんが、だいたい7歳以上がシニア犬と呼ばれています。

*ギネス世界記録に記載されている犬は、オーストラリアにいたブルーイーという犬で、
29歳5カ月(1910~1939)生きたそうです。人間の年齢に換算して約164歳にもなります。


■わんちゃん、ねこちゃんの老化のサイン■




(1) 目
・目やにの頻度が多くなった。
・視力の衰えや目の白い濁りがみられる(老年性白内症の可能性)。

(2) 口
・よだれが増す(口内炎の可能性)
・歯の摩耗や歯の黄ばみ、歯周病などがみられる
・口や舌の薄い内膜にシミが出てきた。

(3) 耳
・聴覚が敏感でなくなった(耳が遠くなった)
・大きな声で鳴く。

(4) 爪
・爪が伸びが遅くなった
・爪とぎをあまりしなくなった。

(5) 睡眠時間
・眠りが浅くなった
・寝ている時間が長くなった。

(6) 被毛の変化
・ひげや口の周り・目の周りの毛に白い毛が目立つようになった。
・全体的に被毛が薄くなり、艶がなくなるうえ、抜け毛も多くなった(毛が生えるのも遅
くなる)

*猫ではセルフグルーミング(自分の毛づくろい)やアローグルーミング(他の猫への毛
づくろい)の回数が減ってくる。

(7) 皮膚の変化
・皮膚がたるみ、全体的にハリがなくなった
・イボができる(悪性と良性がある)

(8) 体型の変化
・背骨のラインが変わってきた。

(9)行動の変化
・散歩に行きたがらない
・立ち上がるのが大変そうになる
・お座りの時に足を横にながすようになった
・正常な歩行ができなくなる跛行(はこう)がみられる
・遊ばない、走らない、ジャンプしないことが多くなった
・椅子から落ちたり、狭いところに入って出てこれなくなった。

(10)トイレ
・回数が減ってきた(病気のサインかもしれない)
・トイレで上手く排泄ができなくなった

※排便やおしっこに時間がかかる、興奮して吠えた時にお漏らしをするなどは、老化による泌尿器官の筋力の衰えです

(11)その他
・寒さに弱くなった


■動物病院へ相談してほしい、ペットの認知症(痴呆)■


以下のような兆候が見られたら、認知症が疑われます。
・フードを食べたがる
・夜鳴きをする
・鳴き声が単調になる
・狭いところに入って身動きが取れなくなる
・同じところをグルグルと歩き回る
・飼い主の呼びかけに反応しなくなる
・しつけで出来ていたことができなくなる

少しでも変だなと感じたら、動物病院に行って認知症の診断テストを受けてみましょう。脳腫瘍などの病気の場合もあるので、早期に診断してもらうことが大切です。

もし、認知症と診断されても、投薬や適切な生活環境を整えたりすることで改善されることもあります。


■わんちゃん、ねこちゃんの介護のしかた(準備・記録するもの編)■




私たち人間が高齢になると、徐々に身体機能が衰えはじめ、足腰が弱くなって転びやすくなったり、口臭が強くなったり歯がもろくなってかけたり歯周病に侵されたり、老眼や難聴などいろいろな不具合が起きてきます。

また、認知症を発症して日常生活が難しくなる人も多くなっています。ペットにも同様なことが起こっています。ペットは人間ほどの寿命が長くありませんが、ペットの健康寿命が延びていることから高齢になると人間と同様に介護する必要が出てきます。

介護が必要なペットのお世話は想像以上に大変なものです。
ここでは、飼い主ができる介護の仕方を紹介していきます。


■日常の健康管理


日々の細かな状態変化に気づけるように記録をつけましょう。
・お水を飲めているか?飲む量が増えたり、減ったりしていないか?
・おしっこの回数、色、臭い、血が混じったりしていないか?
・うんちの回数、状態(下痢や便秘、血が混じったりしていないか?)
・体を触り、腫れやしこりはないか?赤くなっていなかい?掻いていないか?
・目ヤニ、耳の中の汚れや臭い、歯茎の腫れや出血はないか?
・元気食欲はあるか?食べるのを嫌がったり、食べにくそうにしていないか?
・普段と歩き方が違うことはないか?

これらを日々記録することで、病気の早期発見につながりますし、細かな変化にも気づくことができます。かかりつけの獣医師に状態を正確に伝えることができます。
また、以下の方法を参考に、体重、体温、脈拍、呼吸を測定し、記録しておくと状態変化により気づくことができます。


体重のはかり方


愛犬、愛猫を抱っこして体重計に乗り、合計の体重を測ります。今度は愛犬、愛猫をおろし、飼い主さんの体重を測ります。一緒に抱っこして測った体重から飼い主さんの体重を引くとおおよその愛犬、愛猫の体重になります。
体形としては、余分な脂肪がなく、肋骨に触れることができ、腰のくびれ、腹部の吊り上がりがある状態が理想です。


体温のはかり方


正常値は小型犬、猫とも38.0~39.2℃くらいです。
大型犬は37.5~38.6℃と少しだけ小型犬に比べ低いです。
人では36.0℃くらいが平熱なのでペットは私たちよりも2℃ほど体温が高いと覚えておきましょう。

(1)体温計はペット用でも普通の脇で測る電子体温計でも構いません。測る部分がフレキシブルに曲がるタイプの体温計だとペットが動いてしまっても傷つけることなく、より安全に測ることができます。
(2)尻尾の付け根あたりを優しく持ち上げ、ゆっくりと肛門に2cmぐらい入れてください。事前にワセリンやオイルを塗っておくとスムーズに挿入できます。
(3)ピッとなったら測定終了です。流水で体温計の挿入した部分を洗い、アルコール消毒して、愛犬、愛猫専用にするとよいです。
(4)体温計が汚れないように使うたびに被せるプローブカバーというものも売っています。


脈拍のはかり方


正常値はおおよそ小型犬で60~80回/分、大型犬で40~50回/分、猫で120~180回/分ほどです。興奮すると容易にこの値よりも高くなります。
測定方法は後ろ肢のつけ根あたりにあるドクドクと脈打つ大腿動脈を探して指先を当て、1分間に何回脈打つかを測ります。15秒測り4倍しても大丈夫です。


呼吸数のはかり方



正常値はおおよそ以下のとおりです。
・小型犬  20~30回/分
・大型犬    15回/分
・猫    20~40回/分

呼吸を測定するときは、運動時や食後は避け、リラックスしている時や眠っている時に胸の上下する動きが1分間で何回あるか数えます。脈拍同様、15秒測り4倍しても大丈夫です。


■安全、快適、清潔な環境を整える


事故防止のため、以下の項目を参考にお部屋の環境を整えましょう。
・できるだけ段差をなくしましょう
・家具の角にぶつかって怪我をしないようクッション材を巻きましょう
・高さのあるソファを上り下りする際は、スロープや緩やかな階段を設置しましょう
・階段前や玄関先にはゲートを設置しましょう
・コードは引っかからないよう束ねてください
・踏んで危ないものは床に置いたままにせず片付けましょう
・家具との隙間を作らないことも重要です
・床は滑りやすいと怪我に繋がります。滑らないようパット周りの毛のお手入れを忘れないでください。毛が伸びていると滑りやすいです。
・カーペットや滑り止めマット、ジョイントマットなどを活用しましょう。


わんちゃん、ねこちゃんにとって快適な温度・湿度に管理する


夏場は特に家の中でも熱中症の危険があります。できれば普段ペットがいる部屋は一日中冷房を入れてあげましょう。
梅雨の時期も湿度が高くなるため、冷房もしくは除湿を入れて部屋を涼しくしてあげましょう。その際直接風をあてないよう気をつけてください。


■飼い主が手助けをする3つのタイミング



1.朝になったらしてあげること


朝起きたらカーテンを開け、適度に日光浴をさせ、夜は暗くして眠りやすい環境を整えましょう。
散歩をして気分転換させましょう。歩けない場合、状態にもよりますが抱っこで家の周りをお散歩するだけでも良い気分転換になります。
朝に、日の光を浴びて散歩に行くと体内リズムが作られ、夜鳴き防止に効果的です。


2.トイレタイムにしてあげること


トイレは失敗が続くようならトイレの面積を広くします。それでも高齢になるとあちこちにしてしまうことが増えるので、その場合は飼い主さんの負担を減らすためにもオムツを着用させることをお勧めします。
オムツは排泄したら1回1回替えてください。したままにしておくと蒸れて皮膚炎を起こす原因となります。


3.就寝時にしてあげること


高反発のベッドくらいの硬さの寝床を用意してあげましょう。硬すぎても床ずれになりますし、柔らかすぎても筋肉量が減少しているため沈み込んでしまいます。
汚れ防止にすぐに洗えるバスタオルを寝床の上に敷くと衛生的です。


■わんちゃん、ねこちゃんの介護のしかた(日常編)■




■トイレタイムの手助け


高齢になると膀胱の筋肉の収縮力も弱まるため、頻尿になったり、動けなくなると腸の蠕動運動も低下するため便秘がちになったり、自分で排泄をする困難になるケースもでてきます。

何日もうんちが出ていない、力むことが多くなった、おしっこがぽたぽた垂れる、何度もトイレにいきたがるなどの症状がありましたら、かかりつけの動物病院にご相談ください。獣医師に処置してもらいましょう。

飼い主は、排泄(うんちおしっこ)が正常になされているか、いつもと変わらないかの観察と、オムツの利用、陰部・肛門周りの洗浄を行います。

オムツはペット用もありますが、毎日使うには高いため、人用の介護用オムツや乳幼児用のテープタイプのオムツのお腹の部分にハサミで尻尾が出せるよう穴をあけ、代用することもできます。

穴を開けたら吸収性ポリマーがこぼれないようマスキングテープなどで穴の周りを止めます。

ポイントは、着脱の時に負担にならないようテープタイプを使用すること、漏れないようしっかりギャザー部分を脚周りに沿って立たせ、脚周りは指2本くらい入るようにきつすぎないか確認します。

オムツかぶれは鼠径部、肛門周囲、お尻周り、陰部周りに発生しやすいので、排泄したらその都度こまめに替えてあげます。

また、週に数回でもいいのでペットシーツを敷いた上に寝かせて、肛門周り、陰部周りをぬるま湯で洗ってあげると清潔に保つことができます。ドレッシングボトルや霧吹きなどは手に入りやすく手入れをするときにお湯を入れて便利に使うことができます。

洗った後は丁寧にタオルで拭いて、乾かしてあげてください。


■栄養と食事の管理


食事はとても大切です。しっかり食べてほしいと願うものですが、高齢になるとなかなか飲み込みたくても飲み込めない、食べる体勢を維持できない、今まで食べていたフードを食べなくなってしまったなど食べてくれない悩みが出てきます。

体調が悪く、食べなくなってしまった場合は動物病院で適切な治療を受けましょう。ここでは、医学的な問題がなく、食べなくなってしまった場合の食べさせる工夫について紹介します。

・温める


温めると匂いが増し、嗅覚を刺激します。レンジで数秒程度、人肌の温度になるくらい温めてみましょう。


・水でふやかす


一般的に高齢になるとドライフードよりも、水分の多いウェットフードパウチや缶詰の方が食べやすく好むようになることが多いです。

ドライフードをあげている場合は、食事の少し前に予め水または白湯を加え、柔らかくなるようにふやかしてみましょう。


・甘みを加える(犬の場合)


犬は甘みを好むことが確認されています。食べないときはほんの少量、はちみつやシロップを加えてみると食べるかもしれません。

糖分の与えすぎは身体に負担をかけるので与えすぎには注意してください。


・鶏肉や魚のスープをプラスでかけてみる


匂いが増し、水分も多くなり食べやすくなります。塩分の取り過ぎには注意してください。


・ドライフードを大粒から小粒のものに変えてみる。


形状が食べにくく嫌ということもあり、大粒よりも小粒の方が食べてくれることもあります。


・購入するフードの量を1袋500gや、1kgのものにする


大袋で買ってしまうと消費するのに時間がかかり、酸化してしまい味も悪くなります。
猫は特に敏感で開けたばかりのドライフードは食べるが次の日になると食べないなんていうお話もよく聞きます。

購入したら1回に食べる分量ずつジップロックに分け保存すると酸化のスピードを遅らせ、匂いもしっかり感じることができます。


・食べる姿勢を維持する


高齢になると筋肉量の低下、関節トラブルなどで立って食べることが困難になってきます。立って食べられる場合は、肢が滑らないよう滑り止めマットを敷き、ペットの胸の高さくらいの食事台を用意しましょう。


視覚、聴覚、嗅覚が低下してくると目の前に食べ物があっても食べ物と認識できないことがよくあるので、食器を手に持ち、ペットの口元近くまで持っていきましょう。
食べ始めたら食事台で食べさせてあげましょう。

立って食べられない、食事介助が必要な場合は、飼い主がペットの上半身を膝の上に抱え、頭の位置を高くします。

食べやすいウェットフードや缶詰、流動食をスプーンにのせるかシリンジに入れ、香りを嗅かせ、「ご飯食べようね」と声掛けしながら少量を口の中に入れてあげます。

口を閉じて軽く喉をさすり、飲み込むように促します。口の中を見て食べ物が残っていなければ、次の食べ物を入れてあげます。

これを繰り返し、食べ終わったら口の周りを拭いてあげます。
最後にシリンジで水を飲ませます。シリンジは口の脇から入れます。食後30分は、誤嚥や逆流を防ぐため食道よりを胃が下になるよう枕やバスタオルを丸めて頭を高くしたままに保つようにします。


・おやつ


特に獣医師から食事制限がなければあげて構いません。あげ過ぎには注意しましょう。
硬いおやつは食べにくかったりするので、手でさけるぐらいの硬さのもので小さくしてあげます。


■スムーズなお薬の飲ませ方


フードに混ぜたり、食べ物に包んで隠したりしてあげます。
缶詰を少量使いボール状にしてその中に薬を埋め込むという方法もあります。ただし、臭いに敏感な場合、薬を触った手でボール状に丸めると薬の臭いがフードに移り薬の入ったボールだけきれいに残したりすることもあります。

その場合は箸などを使って直接手で薬に触れないで、缶詰フードの中に薬を包んでボール状にしましょう。

どうしても薬だとわかってしまい、飲んでくれない場合は口を開け、喉の奥に薬を落とし、口を閉じ、口の横からシリンジでお水を少量入れて、喉をさすります。

ちゃんと飲めたか、床に落ちたりしていないかを再度確認しましょう。舌の上に置いてしまうと舌を動かし出そうとし失敗するので、喉の奥に落とすイメージで行なうとうまくいくと思います。どうしても薬が飲めない場合は獣医師に相談しましょう。


■入浴・シャンプー


入浴は皮膚を清潔に保つことができ、血流促進や新陳代謝が活発になるなどのメリットがある反面、介護期のペットにとっては体力消耗につながり身体の負担も大きいです。

入浴させたい場合はかかりつけの獣医師に入浴が可能か確認します。

入浴させる日は体調が良い時にしましょう。また、食後は1時間以上空けましょう。咳が出ていたり、下痢をしている時などは避けてください。


入浴の手順


(1)浴室で滑らないようバスマットなどを敷きましょう。寒い季節は浴室、脱衣所の温暖差をなくすため、あらかじめシャワーを出し、お風呂場を温めておく、入浴後ドライヤーをかける部屋もエアコンを入れ暖めておきましょう。
(2)入浴前に歯茎の色、舌の色、咳の有無などを確認し、可能な限り排泄を済ませます。ブラッシングしながら皮膚の状態、オムツかぶれの有無もチェックします。
(3)抱っこで浴室へ連れていき、通常のシャンプーの手順で洗います。入浴中も歯茎、舌の色、咳の有無に注意し、万が一異変があったら無理はせず中止し、病院に連れて行きましょう。
(4)入浴後はしっかりとタオルドライしてから、抱っこで移動しドライヤーでしっかり乾かしましょう。入浴後はお水を飲むよう促しましょう。

入浴ができない場合、身体を温かいタオルで拭いてあげましょう。顔用、身体用、排泄部分用に3枚用意するとよいです。頭部・顔→身体→陰部の順にタオルを変えながら拭いてあげます。ペットの体調を見ながら無理せず、今日は顔回りだけでも構いません。できるだけ負担をかけないようにしてあげることが大切です。


■睡眠時の寝返り手助け方法


寝たきりの状態だと同じ部位が圧迫され、血の巡りが悪くなり床ずれができてしまいます。床ずれを防ぐために、4時間ごとに身体の向きを変更してあげます。
(1)声をかけながら背中をなで、介助者の左腕をペットの首から胸の下、右腕をペットの右側の腰からお尻の下に滑らすようにいれます
(2)介助者の身体にひきよせるようにペットに密着させながら、伏せまたはお座りの状態にします。
(3)介助者の太ももにペットの背中を乗せながら、ゆっくりと滑らすようにマットに身体を移動させましょう
(4)床ずれのできやすい部位は、頬、肩、肘、手根部、腰、足根部です。床ずれができていないかチェックします。


■わんちゃんの困った行動。その理由と対応策■





■夜鳴き


高齢犬では、夜中に単調な声を出して意味もなく泣き続け、何をしても鳴き止まないということが数時間も続くということが出てきます。飼い主や家族は寝不足となり、また近所迷惑になっているかもしれないというストレスを抱えるようになります。

犬の様子をよく観察して、うまくコントロールすることで介護の負担を軽減させることがとても重要となります。


(夜鳴きがはじまる理由)


・体がうまく動かせない
 筋力の低下で寝返りや起立がうまくできないことがあります。
・体調が悪い、身体のどこかに痛みや痒みがある
 皮膚病や外耳炎などの痒みがあるかもしれません。また、内臓疾患や身体的不調による痛みがあるのかもしれません。
・目が見えない、耳が聞こえない
 年を重ねるごとに視聴覚の機能低下が出てきます。見えない聞こえないという不安から夜鳴きがはじまることもあります。耳が遠くなると鳴き声が大きくなる傾向にあります。
・その他
 部屋の温度や湿度が合わない、寝床が合わない、お腹がすくなどという理由も考えられます。


(夜鳴きの対応)


・体内時計を整える(朝日を浴びて生活のリズムを整える)
 1日のはじめは朝日を浴びながら散歩をする。寝たきりの場合でも、朝は窓側に寝床を移して部屋の中での日光浴を心がけます。
・痛みや痒みがないか検診を受ける
・視覚機能の低下により見えない不安となる環境下に置かない
 部屋の中でぶつかるものや今までの感触と異なる新しいものなどは置かないようにする。
・飼い主の匂いのついた衣類などを側に置く
 視聴覚機能の低下により飼い主を探して鳴く場合もあります。いつでも側に居てあげるわけではないので、飼い主の匂いのついた衣類やブランケットなどを置いてあげることで安心感を得ることができます。
・フードやおやつを与える
 少しフードを入れたフードボールを用意しておくと、食べることでお腹が満たされて眠ることも多々あります。
・その他
 寝る前のマッサージも効果的です。マッサージに用いるオイルに睡眠効果が期待できるものもあります。逆にオイルの匂いを嫌がる犬もいるので、少量から試してください。


■徘徊



(徘徊の理由)


犬の場合の徘徊は夜鳴きとともに、介護に置いて飼い主を悩ませる1番の悩みといえるでしょう。

老犬になると、特別な理由もなくうろうろと前進し続けたり、円状にくるくる歩いたりします。また、前進はするものの後退ができずに動けなくなったり、障害物にあったまま立ち尽くしたり、狭いところに入って出られなくなって鳴いたりということが見られるようになります。

症状として、くるくると旋回行動をするほかに黒目が左右に揺れている、首が傾いているという前庭疾患の症状がみられる場合は、まずかかりつけの獣医師に相談しましょう。


(徘徊の対応)


・隙間を作らないようにする
家具などの間に挟まって身動きが取れなくなることが多く、犬の頭が入るくらいの隙間を作らないようにします。

また、角にぶつかることも多く、眼球を傷つけることもあるので、家具や置物の角には緩衝材や布を巻くなどをして怪我をしないような工夫が必要です。

・サークルの内側にマットなどを取り付ける
 ある程度あるける広さのサークルがあるならば、サークルの内側にマットなど(お風呂場の足マットなどのクッション性のあるものを利用してもよい)を取り付けて、当たっても痛くないようにします。

小型犬ならば、子ども用の家庭用プールを利用するのも一つの方法です。

また、転倒してけがをしないように、マットは床にも敷きます。ただし、厚みのあるマットにすると歩きづらくなるので、素材や高さは個々の犬に合わせて選んでください。


■プロの手を借りて、愛しのペットとストレスの少ない生活を!■





■ペットの介護サービス


ペットが高齢になると、人間と同様に介護が必要になってきます。例えば、排泄を失敗する、食が細くなる、上手くフードが食べられない、足腰が弱くなり歩行が困難になってくるなどの症状が多くみられるようになってきます。

また、認知症の発症により、夜鳴きが始まる、徘徊(同じ場所をぐるぐる回る)するなどの他に、しつけたことが出来なくなる、視覚の衰えなどにより家具や壁にぶつかってしまう、といった生活に支障をきたすことが出てきます。

今後、高齢化社会がいっそう進むことで、人間の介護現場で問題視されている老老介護状態になる飼い主が増加しつつあります。

人間の高齢化が進むと同時にペットの高齢化も進むことで、高齢飼育者と高齢ペットという状況が生まれています。

現に高齢者のペット飼育の崩壊が始まっており、川崎市では「かわさき高齢者とペットの問題研究会」が発足して、飼い主の高齢化に伴うペットの問題の早期解決に向けてサポートすることを目指して活動を行っています。

また、飼育者よりもペットが長生きすることで、ペットだけが1頭取り残されるケースなども増えてくるでしょう。既に「老犬ホーム」や「ペット同居可能なサービス付き高齢者向け住宅・ペット可老人ホーム」、「ペット信託」といった新たな施設やサービスもあります。

老犬ホームは、老犬を安心して預けることができる施設ですから、飼い主が高齢であることを理由に飼育を断念してしまう人にも嬉しいサービスといえるでしょう。

一方ペット同居可の高齢者向け住宅やペット可老人ホームは、ペットと過ごしやすい住居、施設に高齢者自らに入居してもらうことで、安心してペットと暮らせるようなサービスを提供しています。

ペット信託は、生前に信託契約を結ぶことにより、自分の死後にペットとその飼育費を新たな飼育者へしっかりと託すことができるサービスです。これによって、取り残されたペットが保健所に引き渡されることなく、殺処分の対象にならずに済みます。


■老犬ホーム


老犬ホームとは、何らかの事情により老犬の世話が出来なくなってしまった飼い主から、短期や長期で老犬を預かり介護する施設です。

老犬ホームの入居頭数は徐々に増加しており、リブモ株式会社が運営する全国の老犬ホーム検索・老犬介護の相談窓口「老犬ケア(リンク:https://www.rouken-care.jp/r )」によると、2021年の調査では、全国の老犬ホームの有料入居数は599頭、老猫ホームの有料入居数は80頭となっています。

■大好きなペットとのお別れと、飼い主の心のケア■



ある調査では、ペットとの死別を経験したことある飼い主544名のうち、ペットの死が「老衰」であったと回答は44%を占めていました。

ペットの長寿が多くなっている現在では、動物病院で看取る他に自宅で看取るという飼い主も多くなってくるでしょう。最愛のペットとの別れは飼い主にとって悲しい出来事です。

動物病院で亡くなった場合は、獣医師や動物看護士によって適切な処置をしてもらえますが、ご自宅で、看取られた場合はその後の安置も飼い主が行うようになります。


■自宅での安置方法


1.体を清める
ブラシで毛並みを整え、お湯で湿らせた布等で体をきれいに拭いてあげる。ご遺体の下にペットシーツなどを敷いてあげることで万が一、体液が出て来てもシーツを変えることで清潔を保つことができます。

2.死後硬直に備える
体を綺麗に拭いてあげた後は、手足を胸の方へ折り曲げ死後硬直に備えます。これを行わないと、棺に入れる際に体が収まらない可能性や、自然な姿での供養が難しくなります。犬猫のような小さな動物の場合、一般的には2~3時間で硬直が始まるので、出来るだけ早く行います。

3.棺を用意する
ペットの遺体を安置する棺を用意します。市販のものもありますが、遺体が入る大きさの箱を用意します。火葬するときには、棺の中に燃えないもの(金属等)は入れることができませんので注意してください。

また、遺体が傷まないよう、棺の中に敷いたブランケットやタオルの下にドライアイスや保冷材を置きます。冬場の暖房がきいた部屋に安置する時には、ペットのお腹や頭部を冷やすことで腐敗を防ぐことができます。

いつまでも遺体をそのままにしておくことはできません。安置をしてから大体1日ぐらいで、火葬、または土葬をします。

ペットのご遺体については、市区町村の役場に問い合わせるとその方法を教えてくれます。また、ペットの火葬業者も各地にありますし、かかりつけの動物病院でも相談に乗ってくれるはずです。

ペットの遺骨や被毛からジュエリーなどを作るというサービスもあります。どのような形にせよ、飼い主の納得のいう方法で看取り、お別れをすることが大切です。


■ペットロス(ペットの死)


ペットの寿命が延びるということは、それだけペットと一緒にいる時間が長くなるので、ペットを亡くした時の悲しみが強く現れることがあります。

悲しみがひどくなると、「ペットロス症候群」として心理的、最悪の場合は身体的な疾病になってしまうケースもあります。

ペットを亡くした家族のためのセルフヘルプ・グループ「Pet Lovers Meeting」では、
3ヶ月に1度の「ミーティング」で、ペットを喪失して悲嘆の中にいる方たちが互いに支え合う場を提供しています。
*Pet Lovers Meeting :https://www.ddtune.com/plm/ 


■漢方を活用して、一日でも長く元気に過ごそう!■




加齢を止めることはできませんが、出来るだけ元気に過ごすためのアンチエイジングとして漢方を活用することも良いです。

漢方のアンチエイジングについて知るためには、五臓の「腎」について知る必要があります。漢方の中の重要なキーワードとして、五臓というものがあります。

五臓は、肝、心、脾、肺、腎です。この五臓は、漢方独特の表現です。例えば現代医学でいう、肝臓と肝は違います。この五臓のうち、最も老化と関係するのは、腎です。

現代医学でいう、腎臓と腎も異なります。腎の方が範囲が広いです。腎の働きは、今でいうと腎臓と副腎の働きを合わせた感じが近いです。したがって、腎の働きが低下してしまうと、水分代謝が悪くなって、浮腫んでしまいます。

頻尿になったり、老廃物を捨てられなくなったり、体の潤いがなくなることもあります。また副腎からのホルモン分泌が悪くなってしまいます。

副腎から出るホルモンは様々な種類があるので、影響もすごく大きいです。例えば、アドレナリン、性ホルモン、成長ホルモンなどがあります。アドレナリンの分泌が乱れると、やる気が低下してしまいます。成長ホルモンの働きは、名前の通り体の成長に関わります。

そして、もう一つ成長ホルモンの働きとして重要なのは、体の回復です。

睡眠時に成長ホルモンがしっかり分泌されると、睡眠の質が良いと言われますが、これは、成長ホルモンが夜に働いて、肉体を回復させます。

成長ホルモンがしっかり働かないと、体が回復せずに、老化が進んでしまいます。
したがって、腎の機能を維持することは、アンチエイジングに繋がってくるのです。

では、漢方では、どのようなものを使うと言えば、補う腎の薬と書いて、補腎薬というものを使います。名前の通り、腎の働きを補うものです。

副腎の保護としても使用する補腎薬は様々ですが、その代表格が
鹿の角である鹿茸(ロクジョウ)という生薬です。

アンチエイジングの代表格としても有名です。

鹿茸とは、雄鹿の伸びきる前のまだ硬くなっていない柔らかい角を乾燥したものです。
朝鮮人参と並び、漢方で欠かせないお薬です。

日本でも古来より、長寿の薬として鹿茸が愛用されてきており、日本書紀にも記載があります。「お薬狩り」という行事が日本書紀に記載されていて、これは、女性が薬草を摘んで、男性がこの鹿の角をかりにいくものです。

この鹿茸は幅広く、鹿茸は「生命力を増し、骨髄や血の元となり、元気をつけ、筋肉を強くし、骨を堅く丈夫にし、体力の消耗によるあらゆる病、難聴、目のくらみ、目眩、下痢や腸の疾病を治す。」との記載があります。

これだけは範囲が広いのは、腎の働きに腎臓と副腎が含まれためです。
アンチエイジングを初め、夜間頻尿から筋肉強化まで幅広く応用されます。

また他にも補腎薬として有名な処方に八味地黄丸(はちみじおうがん)というものがあります。


八味地黄丸(はちみじおうがん)



八味地黄丸に含まれる生薬は以下のとおりです。

(熟)地黄(じゅくじおう) :ゴマノハグサ科、補虚薬 — 補血薬/微温
山茱萸(さんしゅゆ)  :ミズキ科、収渋薬 —固精縮尿止帯薬/微温
山薬(さんやく)    :キク科、補虚薬 — 補気薬/平
沢瀉(たくしゃ)    :オモダカ科、利水滲湿薬 — 利水消腫薬/寒
茯苓(ぶくりょう)   :サルノコシカケ科、利水滲湿薬 — 利水消腫薬/平
牡丹皮(ぼたんぴ)    :ボタン科、清熱薬 — 清熱解毒薬/微寒

以上、「六味地黄丸」
桂枝(けいし)      :クスノキ科、解表薬 — 発散風寒薬/温
(炮)附子(ぶし) :キンポウゲ科、温裏薬/熱

■生薬の解説■
・地黄は、栄養を補い老化を防ぐ作用、消炎止血作用、神経反射を良くする作用があります。
・山茱萸は地黄の働きを助けて老化を防ぐ作用を助けます。また地黄とともに耳鳴り、めまい、腰膝のだるさや無力感、遺精、寝汗を治します。
・山薬は地黄とともに、寝汗、熱感、口渇、疲労感を治します。
・沢瀉は腎臓に働きかけて、血中の過剰の水分を尿として排出します。
・茯苓は、消化管内、関節内、筋肉内、組織間の水など、過剰な水分を血中へ移動させて、利尿します。
・牡丹皮は、出血やうっ血に伴う熱感や手足のほてりを治します。
・桂枝は、血行を良くして、瘀血の除去作用を助けます。
・附子は体内を温めます。また桂枝と組んで寒さや余分な水分による関節痛、筋肉痛、腰痛などを改善します。

また補腎薬は何種も存在し、適切な漢方は個人個人で変わりますので、
漢方を服用される場合は、漢方に詳しい薬剤師に相談することをお勧めします。