■猫にお魚、犬にホネ付き肉!それって本当に大丈夫?■
ペットの健康維持のため毎日の食事はとても大切です。健康で長生きしてほしいから私たち人が食べているものを一緒に食べさせてあげたい、またはペットがほしがるからあげてしまうといった状況もあるでしょう。
しかし、私たちが普通に食べている物でも犬や猫にとって有害になる食べ物がいくつかあります。
また犬や猫の中にはなんでも口に入れてしまう子もいるため、薬や薬品の管理、食べると危険な植物についても知っておくと危険を回避できますし、万が一食べてしまった場合獣医師に報告することで適切な処置を行なうことができます。
このコラムでは、犬猫で共通の食べてはいけないものについて、
以下の20項目に分けて説明します。
- ネギ類(玉ねぎ、ネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウなど)、ゆり根
- チョコレート、コーヒーなどのカフェイン入り飲料
- キシリトールを含む食品
- ぶどう、レーズン
- アボカド
- 【特に犬で注意】マカダミアナッツなどのナッツ類
- 貝類、エビ、イカ、カニ、タコ、淡水魚(生)
- 【特に猫で注意】青魚(マグロ、サバ、アジ、イワシなど)
- 生の卵白
- 【個体差あり】牛乳などの乳製品
- ドッグフードを猫にあげたり、キャットフードを犬にあげること
- 【特に猫で注意】プロピレングリコール
- 生肉
- 鶏の骨や鯛などの骨
- マグネシウムを多く含む食材(煮干し、海苔、鰹節、ミネラルウォーター)
- 生のパン生地、アルコール
- 糖分・塩分を多く含む食品、香辛料
- 人用医薬品(鎮痛剤、風邪薬、サプリメント等)
- タバコ
- その他食べると危険な身の周りの物
1.ネギ類(玉ねぎ、ネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウなど)、ゆり根
ネギ類にはアリルプロピルジスルフィドという犬や猫の赤血球を破壊してしまう物質が含まれています。食べてしまうと個体差はありますが、ぐったりし、貧血を起こし、嘔吐、黄疸や赤っぽい濃いおしっこなどが症状として現れます。
この物質は加熱調理しても消えません。ハンバーグなどはもちろん、すき焼きのお肉、豚汁などの汁をご飯にかけてあげることもNGです。
ネギ類を直接食べなくても汁の中に赤血球を破壊してしまう物質が溶け出しているからです。
ニンニクにも玉ねぎと同じアリルプロピルジスルフィドが含まれていますが玉ねぎほどは含まれていないため、手作り食で使われることもあります。
しかし、子犬や子猫に与えたり、多量に摂取することは危険です。
また、ネギ類はユリ科に属する植物でもあります。
ユリ科の鑑賞用植物(チューリップ、スズラン、ユリ、ヒヤシンスなど)についても誤って口にすることがないよう注意してあげてください。
私たちが食べるゆり根もその名の通りユリ科植物の球根部分です。ユリ科の植物は花や葉、根どの部分でも口にすると中毒を起こしますので十分気をつけましょう。
2.チョコレート、コーヒーなどのカフェイン入り飲料
カカオに含まれるテオブロミンという物質が心臓血管や中枢神経を刺激し、嘔吐や下痢、頻脈、興奮、痙攣、突然死などを起こします。
特にこの物質は犬で感受性が高く、小型犬ではカカオ含有量の高いビターチョコレート1つで致死量に達し死亡してしまった事例もあります。
コーヒーに含まれるカフェインにも同じような作用があります。
3.キシリトールを含む食品
急激な低血糖を起こし、意識の低下や痙攣、肝障害を起こす可能性があります。特に一度に大量に摂取してしまう可能性がある大型犬では注意が必要です。
チワワでもキシリトール2粒で中毒を起こしてしまう可能性があります。
4.ぶどう、レーズン
原因ははっきりしていませんが下痢や腹痛、嘔吐、最終的に腎不全を起こす危険性があります。
5.アボカド
多量に摂取した場合、ペルシンという成分が下痢や嘔吐、胃腸の炎症を起こす恐れがあります。
6.【特に犬で注意】マカダミアナッツなどのナッツ類
原因ははっきりしていませんが、マカダミアナッツで嘔吐や震え、心拍の増加などの中毒症状が見られたという報告が犬であります。
そのほかのナッツ類も脂質が多く含まれるため肥満の原因になったり、喉に詰まらせたり、下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こす可能性があります。
基本的にナッツ類は犬や猫に与えない方がよいです。
7.貝類、エビ、イカ、カニ、タコ、淡水魚(生)
これらにはビタミンB1を分解する酵素チアミナーゼが含まれています。この酵素は加熱により失活するため加熱調理して与える場合は問題ありません。
しかし、イカ、タコは消化不良の原因になったりするので与えないようにしましょう。魚介類を与える場合は火を通してから小さくして少量与えるようにしましょう。
生で食べるとビタミンB1欠乏症になり、肢の力が入らないといった症状から重度の場合意識障害が起きることをあります。
貝類の中でアワビやサザエは、肝にあるピオフェオホルバイドという成分が光線過敏症を引き起こす場合があります。
この成分は加熱しても毒性がなくならないため、生、加熱に関わらず与えてはいけません。
日光に当たると皮膚炎を起こす光線過敏症は特に猫で注意が必要です。
またスルメは匂いが強いので食べていると欲しそうに寄ってくるかもしれませんが、絶対に与えてはいけません。
スルメは食べると胃の水分で膨らみ、消化不良、運動低下を引き起こします。胃の中で10倍以上にも膨れる事もあるそうです。
8.【特に猫で注意】青魚(マグロ、サバ、アジ、イワシなど)
猫には魚という考えから大量に長期間食べてしまうと黄色脂肪症(イエローファット)という病気になってしまいます。
これは青魚には多くの不飽和脂肪酸が含まれるため体内でビタミンEが消費されがちになってしまうことで起こります。
猫=魚、青魚=身体に良いという思い込みで毎日のように与えてはいけません。
これらを与える時は、必ず加熱して、骨はきれいに取り除いてあげてください。
生のままのアジ、イワシ、サバ、サンマはアニサキスの幼虫が寄生しやすく、害を及ぼすことがあります。与えすぎに注意しましょう。
ひとつまみ程度の少量に留めてください。マグロの缶詰が好きだからといって毎日与えるようなことはやめましょう。
9.生の卵白
白身に含まれるアビジンが吸収を阻害してしまい、下痢、皮膚炎や抜け毛の原因になります。
アビジンは熱に弱いため加熱するか、卵黄にはビオチンが多く含まれているため全卵で与えれば問題ありません。
10.【個体差あり】牛乳などの乳製品
離乳した犬や猫は牛乳中の乳糖を分解するラクターゼという酵素を十分に持っていないため、乳糖の量が増えると消化・吸収ができずに下痢を起こす場合があります(乳糖不耐症)
個体差はありますが、体質によって下痢や嘔吐が現れることがあります。
チーズやヨーグルトなど発酵により乳糖が分解されているものは少量であれば与えても構いませんが、あげると下痢をするなどの症状が見られたら与えるのは控えましょう。
11.ドッグフードを猫にあげたり、キャットフードを犬にあげること
ドッグフードを猫に食べさせると必要な栄養素であるタウリンが入っていないため、目や心臓疾患に罹りやすくなってしまいます。
また猫は真性肉食動物なので、猫は犬に比べて1kgあたりのタンパク質の必要量が3倍いります。そのためドッグフードではタンパク質不足になってしまいます。
そしてドックフードは猫の下部尿路疾患に対する配慮がされていないため、尿のアルカリ化やストルバイト尿石症の危険性もあります。
反対にキャットフードを犬に食べさせると、ドックフードに比べてタンパク質が多すぎて膵炎などに罹りやすくなってしまいます。
動物種によって、食性も栄養要求も異なるため、それぞれの動物用に作られたフードを与えるようにしましょう。
ドライフードは安いからと大袋で買わずに、1か月で1袋を食べきれる量を購入しましょう。開封した瞬間から空気に触れるため酸化が進み、味も落ちてきます。
ジッパー付きのドライフードを購入するか、開封したらジップロックなどの袋に移し、湿気のない冷暗所に保管し1か月以内に食べきることをお勧めします。
缶詰やパウチは開封したらラップや封をし1、2日で食べきるようにしましょう。
12.【特に猫で注意】プロピレングリコール
水分保持剤や保湿剤として、プロピレングリコールが添加されている食品があります。セミモイストフードと呼ばれているドライフードの形状だが指で潰せる硬さのフードに添加されていることが多く、気をつけなければいけません。
これを摂取すると猫では赤血球にハインツ小体が生じ、ネギ中毒と同じような症状を起こしてしまう危険性があります。
またプロピレングリコールは化粧品にも使用されていることがあるため、なんでも舐めてしまう場合は注意が必要です。
13.生肉
加熱調理することにより死滅するはずの病原性細菌が潜んでいることがあります。
食中毒や消化器障害を生じる危険性があるため、基本は加熱調理したものを与えましょう。
冷凍保存した生肉でも同様です。特に豚肉は人獣共通感染症のトキソプラズマという原虫が潜んでいる可能性があります。
必ずしっかり中まで火を通しましょう。
レバーの摂り過ぎはビタミンAの過剰を招きます。多くても週1~2回程度にし、与え過ぎには注意してください。
14.鶏の骨や鯛などの骨
犬というと骨が好きというイメージを持つ人もいるかもしれませんが、鶏の骨は加熱すると鋭く尖った状態で裂けるため、食べてしまうと喉や消化器官を傷つける恐れがあり大変危険です。
犬は肉も骨も大好きだし、欲しがるからといってフライドチキンを骨付きであげるようなことは絶対にやめてください。
鯛の骨も大変硬いため、鶏の骨と同様に危険です。
鯛の骨だけではなく、魚をあげるときは骨を丁寧に取り除き、内臓を除いた身の部分をほぐしてあげましょう。
また、硬い人の力でも折れない骨型のおやつがたまに売られているのを見ますが歯を傷つけてしまいデメリットしかありません。
犬に骨を与えてもしゃぶることはしません。
歯磨きの役割も果たしません。歯が傷つくだけです。時に折れてしまうこともあるため与えないようにしましょう。
似たような事例で問題となるのが焼き鳥の串や団子の串です。
欲しがるからとあげたらそのまま串ごと持っていかれ、急いで食べ串ごと丸のみしてしまったと動物病院に来られるケースがあります。
最悪の場合命に関わりますし、開腹手術になることも多いです。絶対に焼き鳥や団子はあげない。手の届かないところに置き、置きっぱなしにせずすぐに食べましょう。
15.マグネシウムを多く含む食材(煮干し、海苔、鰹節、ミネラルウォーター)
煮干し、海苔、鰹節はマグネシウムを多く含むため、一度でも泌尿器系疾患で結石ができてしまった場合は避けた方がいい食材です。
再度結石ができやすくなってしまいます。特にオス猫で注意が必要です。
健康でも食べ続けると結石になりやすくなるため、与える場合は少量にとどめ毎日摂ることはやめましょう。健康な場合、手作り食の出汁として用いるのは構いません。
煮干しは塩分が強いため、無塩タイプを使うか、何度かお湯をかけて塩抜きしてから出汁をとるのがお勧めです。
ミネラルウォーターを常飲すると結石になる恐れが高まります。水道水を与えるようにしましょう。ペットボトルのお水を買って与える場合は日本製の軟水のお水を与えてください。
16.生のパン生地、アルコール
生のパン生地は食べてしまうと胃の中で膨張します。また生のイーストはアルコールを形成するためアルコール中毒になる危険性があります。
アルコールは体内で分解できないので少量でもアルコール中毒を引き起こします。
17.糖分・塩分を多く含む食品、香辛料
犬は味覚のうち甘みに特に敏感です。そのため甘いケーキや果物などは大好きです。
しかし、甘い物の摂り過ぎは肥満や糖尿病に繋がります。与え過ぎには注意しましょう。
食べてはいけない果物は、ぶどう、いちじく、パパイヤ、マンゴーです。
ぶどうは腎障害の危険性があり、いちじく、パパイヤ、マンゴーは下痢・嘔吐といったアレルギー症状を引き起こす場合があるので与えないようにしましょう。
みかん、バナナ、いちご、りんご、梨などは与えても大丈夫です。
ただし糖分が高いので、与え過ぎには注意が必要です。リンゴや梨は大きいと喉に詰まらせる危険性があるため小さく切ってあげましょう。
りんご、桃、サクランボの種は食べると嘔吐や痙攣といった中毒症状を引き起こします。必ず種は取り除いてあげてください。
反対に猫は甘さを感じません。苦みや酸味に敏感です。
猫は果物を食べない場合が多いので無理に与える必要はありません。
犬や猫は、人に比べて塩味に対する味覚があまり敏感ではありません。塩分の多い食べ物を食べさせ続けていると、心臓や腎臓に負担がかかり、将来的に心臓病、腎臓病に罹るリスクが高くなります。手作りする場合は薄味を心がけましょう。素材の味のみで十分です。
香辛料は、犬や猫に与えないようにしましょう。犬や猫は辛味や苦みに対する味覚が鋭敏です。
基本的に犬猫には必要のないものです。胃を刺激し、肝臓や腎臓に負担をかけます。
18.人用医薬品(鎮痛剤、風邪薬、サプリメント等)
鎮痛剤や風邪薬に含まれるアセトアミノフェン、イブプロフェンは、人ではよく使われますが犬猫では中毒を起こし大変危険です。
軽症例では消化器症状、重症例では肝障害、腎障害、痙攣、昏睡など命に関わります。アセトアミノフェンは特に猫で影響が出やすく、貧血を起こし錠剤1錠で命を落としてしまうこともあります。
ダイエットサプリに含まれるαリポ酸は、猫が1粒でも摂取すると消化器症状や肝障害を引き起こし死亡した事例もあります。
ここに述べた薬やサプリ以外でも飲んでしまうと大変危険です。薬やサプリメントは出しっぱなしにせず犬猫の届かないところに置き、簡単に開けられないボックスに入れ保管しましょう。
身体に良いサプリメントだからと人用のサプリを与えるのも厳禁です。もしどうしても飲ませたいサプリメントがある時は獣医師にご相談ください。
また、健康をサポートする目的であれば、サプリメントの他に漢方薬があります。
基本的に漢方薬は人と同じものを体重換算してペットに与える事ができます。
しかし、ペットに対して注意が必要な漢方もあるため、与えたい漢方がある場合は一度薬剤師にご相談ください。
19.タバコ
食べてから1時間前後で症状が現れます。軽症例では嘔吐、下痢、よだれ、興奮などの症状、重症例では震え、痙攣、昏睡などの症状が認められます。
水溶性であることから飲水などで症状が悪化することがあります。
タバコは食べてしまう以外でもタバコの副流煙が犬猫の身体につき、毛づくろいをするため知らず知らずのうちにニコチンが身体の中に蓄積されてしまい具合が悪くなったり、ガンの発生リスクを高めてしまう要因にもなります。
20.その他食べると危険な身の周りの物
■家庭にある薬品類(除草剤、防虫剤、殺虫剤、灯油、洗剤、漂白剤等)
出血、嘔吐や下痢の消化器症状、神経症状を示すこともあります。扉のついた棚の中に保管しましょう。使って間もない時は立ち入らせないようにしましょう。
■ボタン、タオル、靴下、毛糸、ひも状の物、針、噛みちぎれそうだったり口にすっぽり入ってしまうサイズのおもちゃ
口に入るサイズの物はきちんと片付けましょう。おもちゃも一緒に遊ぶときに出してあげ、遊ばないときは片付けましょう。
特に猫はひも状の物を好みます。裁縫をしていて糸のついた針が落ちたのに気づかず飲み込んでしまった、ひも状のおもちゃや毛糸を見つけ遊んでいるうちにどんどん飲み込んでしまったというケースで動物病院へ来られることも多いです。
ひも状異物は命に関わります。消化管内で絡まり、機能不全や壊死を起こします。猫を飼っている方は十分注意してください。
犬では特に大型犬で、ゴム製のボールを与えていたら知らぬ間に嚙みちぎって飲み込んでしまうことがあります。噛むことが大好きな犬には壊れやすいおもちゃは与えないようにしましょう。
また飲み込んでしまうこともあるので飲み込みそうな小さな物は与えないようにしましょう。
■危険な植物
・ユリ科(チューリップ、スズラン、ヒヤシンス、ユリ)
・サクラソウ科(シクラメン)
・トウタイグサ科(ポインセチア)
・ヒガンバナ科(スイセン、アマリリス)
・ツツジ科(ツツジ、シャクナゲ、サツキ)
・ヒルガオ科(アサガオ)
・アロエ等
私たちが観賞用として楽しんでいる植物でも食べてしまうと中毒症状を引き起こすものが沢山あります。ここに挙げたものは一部になりますのでご自宅で育てる際は植物を食べたりしないよう十分注意しましょう。
猫の中には猫草を好む子もいます。猫草を用意してあげても良いでしょう。